Vol.7 LOVE-04~Episode 27~

しかし僕は、ここまで来て簡単に諦めたくはなかった。

住所と名前はあるのだ。
それを手がかりになんとかならないか。
「そうだ、ハローページだ。」僕は電話ボックスにあったハローページから彼女の電話番号を探った。
(ストーカーのごとく?)
住所と苗字の一致する電話番号みつけた。

「これかな?」

女性の一人暮らしなので、お父さんの名前を載せてるのだと思って、
イチかバチかその電話番号へコールした。
緊張の一瞬だった。

「頼む、出てくれ」

しかし、コールは鳴ってつながるが、その後なにやら電子音がなるだけで彼女が出る気配がない。
(のちにそれはファックス音だったという事が分かった)

「そんな…」

僕は愕然とした。

魂の抜けた状態となった僕は再び大粒の雨に打たれ札幌へ向けて走った。
必ずチャンスはある。
そう思って走った。
いや、そう思わないと走れなかった。(T_T)
雨の勢いは増していくばかり。
帽子も手袋も靴も、すぐにジュクジュクの状態になった。
体温も下がって、どこかで温かいものでも食べたくなったが、
それにはまず雨宿りの場所を確保してそこで雨具を脱ぐなどの行動が必要だ。
それよりも僕は先へ進むことを優先した。

「滝川市から岩見沢市をつなぐ国道12号は日本最長の29.2km」

と書かれているという看板があった。
「このまままっすぐ進めばいいだけか」と、少しだけ気が楽になったと思ったが、
同じ景色がずっと続いてるようで、今の僕には結局それも苦痛だった。

雨がこうも強くては、スピードも出せない。
僕は体力の疲労と空腹に限界を感じて、雨具のまま入れそうなたこ焼き屋でたこ焼きを買い、
それを雨宿りできる場所で食べた。
なぜたこ焼き屋を選んだのかは分からない。
大阪を思い出したのだろうか。

体力は少し回復した。


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その後も僕は雨に打たれながら僕はひたすら走った。
岩見沢を越え、札幌のユースへ着いたときはやっと苦しみから解放された感じだった。
しかし札幌YHへ逃げ込んだあとも外は雨が止んではいなかった。

夜になって僕は洗濯をしようと、ユースにあるコインランドリーに向かった。
外を見るとまだ雨は止んでいなかった。

コインランドリーには同年代くらいの男性と女性がいた。
話をかけると、どうやら、ここにいる僕ら3人は3人ともチャリで、一人旅をしてるとのことだったので
自然に話が弾んだ。
僕が、例の「桃岩荘」の話をもちかけると
女性の方はそこに泊まったらしく
「あのユースはすごいですね~」という反応だった。
男性のほうは
「ああ、あの北海道3バカユース。噂は知ってたんだけど、行けばよかった」
という反応だった。

3人とももうすぐ旅は終わる。

北海道に来てそれぞれの思い出を作った3人は
楽しかった北海道での出来事を語り合った。

今日は雨の中で散々な想いで走ってきた僕にとって
今この人達と出会って語り合えたのは
唯一心を和ませてくれたひと時だった。

Vol.7 LOVE-04 Episode 27