第9話  幻の蝶々貝

案内が終わると次は歌って踊るというイベントが始まり、また違う人が来て今度は踊り方の説明を始めた。

どうやら僕達は強制的に踊らされるらしい。しかもその踊り。それは「踊り」ではなく「ジェスチャー」と言ったほうが適切なほどだった。

例えば吉田拓郎の「落陽」の歌詞、 ♪~しぼったばかりの夕日の赤が~  であれば ♪~しぼったばかり~ の歌詞時のフリは牛の乳絞りをする動きをするなど。そんな踊りの説明が延々と続いた。

「アホなことやっとるな~さすが3バカユース!」と思いながらそれを聞いていた。

「じゃあみなさんでやってみましょう。」
「・・・やっぱりやらされるみたいやな。」と僕らは踊り始めた。おっちゃんのギターをバックに歌を歌いながら。

僕はおっちゃんの持つギターを見て弾きたくなったが、「弾かせてください」と言えず、踊っていた。
でもそんなバカ騒ぎも結構楽しかった。
ひさびさに楽しくはしゃいだ。
全くの他人と手をつないで踊ったりもして。

その中には夕方に出会った女の子も楽しそうにしていた。
 そのイベントが終わると、僕は急いで蝶々貝を買いに行った。3つも買ったので、おっちゃんは一つおまけしてもう一つ僕にくれた。
「やっと憧れの蝶々貝が手にはいったぜ!」大満足の僕だった。ついでにそのおっちゃんに頼んでみた。

「あのギターちょっと弾かせてもらっていいですか?」
「ああ、いいよ」といってくれたので僕はひさびさにギターを手にした。

長いこと自転車に乗りハンドルを握っていたので小指が少ししびれていたが僕は北海道に来てまさか弾けるとは思ってなかったので上機嫌になって弾いていた。

するとそのおっちゃんが、「なんだ、弾けるならさっきみんなと一緒にやればよかったのに・・。」と言ってくれたが、さすがにそこまででしゃばることはできなかったのだ。

とはいえ今日はとても楽しいひとときを過ごすことができた。
北海道3バカユース。僕はここで新たな目標ができた。

「残りの二つの行ってみよう。きっと楽しいにちがいない。」

僕は興奮が冷めやらぬまま寝床についた。

 翌朝、出発する時、ユースのオネーサンがオニギリをくれた。チャリダーには全員サービスらしい。

「ありがたい。気がきくな~。ますます気に入ったぜ!えりもユース!」と思った。

そして僕は昨日会った女の子に別れを告げ次の目的地へと向かった。

Vol.2 RUN
~疾走~

Vol.2 RUN-12 Episode 9