Vol.6 SKY-07~Episode 25~

第25話
「利尻富士」

8月28日。
早起きするつもりだったが、普通の起きる時間の8時ごろ起きてゆっくり山に登る準備をしていた。

利尻富士登山は観光案内では片道6時間かかると書いていたが、僕は

「それはお年寄り向けの案内だろうから、俺ならその半分くらいの時間で済むだろう。」

と予測していたので僕は余裕をかましていた。

念のためそのキャンプ場で出会った人に、利尻登山がどれくらいかかるのか聞いてみた。
すると

「だいたい案内通りの6時間くらいはかかりますよ」

と、その人は言うではないか。
僕は急に不安になり、今日登山するのは諦めることも考えた。
しかしもう一人の人にも聞いてみたら

「今からだったら普通に帰って来れますよ。」

と言っている。
どっちの言うことが正しいのかよく分からないまま僕登山の入り口に来た。

そのすぐそばにあった店で念のためもう一度聞いてみた。
するとそこのおばさんは

「今からだったら十分行けるよ。そりゃアンタみたいな若い人なら。」

と、言われたので僕は決意やっぱり登ることを決意した。
自転車はキャンプ場にある木にロープ状のロックを縛り付けてテントもそのままにしておくのは不安だったけど、何もないことを祈って僕は山に入った。

僕にとって、山登りの経験は皆無に近いほどだったが、天気は快晴だし山の頂上からは稚内も見えるらしいので楽しみでワクワクしていた。

山入った僕は少し急ぎ足だった。

いかに「今日中に帰って来れる」と言われていたとはいえ、遅れてるのは確かだ。
なんせ山に入ったのは10時頃だったから。

山に入ってしばらく歩いていると、目の前に小さな動くものが現れた。

リスがいた。

そのリスは僕の進む方向へ逃げ、僕が近づくとまた僕の進む方向へ逃げた。

しばらくこれを繰り返した。

↑わかりにくいでしょ?さすが保護色。

またしばらく歩いたところで下の景色が見れる場所に来た。
「少し高いところに来たかな」
よく見ると、あの桃岩に似たペシ岬が小さく見えていた。

右の方にあるちょっと飛び出した小さな山みたいなのがペシ岬です。↑

8号目あたりから傾斜はキツくなり、道は険しくなった。
ちょうどそのあたりに来たとき、下ってくる人たちの中に僕に話しかけてくる人がいた。

「あ、昨日の…」

例のピーターパンさんだった。


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僕はこの先まだまだ坂は続くのかなど、2~3の質問をした。
どうやらその人の話では少し前からちょっと雲の動きが怪しくなってるとのことだった。
それを聞いて僕はその人に別れを告げて、先を急いだ。

9合目に来ると周りに緑は少なくなった。

苦しい坂道は続いたが、ようやく頂上が見えた。

やっと着いたという思いだった。
頂上に立つと、そのスペースは狭く、そのわずかな区画だけが雲に届く領域のように思えた。
その場所にテントを張って今夜そこで過ごそうとしている人がいた。
水と食料さえあれば、僕もそんなことをしてみたいと思った。
なぜならそこから見える景色はすばらしかったからだ。
なにせ、天気は快晴。
頂上からは島の360が全て見渡すことが出来、隣の礼文島、稚内もはっきり見えることができた。

近づいてくる雲はまるで生き物のように動き、
その大きな体は頂上の周りを流れていた。

下を見れば町の様子が見え、そこはまるで神聖な神が存在する領域にも思えた。

宗谷岬が日本最北端。
だったら、
利尻島はその周りに浮かぶ雲のようだった。

僕は、この地に来たことを記念して、そこにあった岩に
「ZERO参上」と書いた。
(ZEROではなくもちろん本名ですけど。
彫った訳ではなく、石ころで岩に書いた程度なのですぐに消えると思うが)

一ヶ月前の昨日、北海道に上陸し、それ以来北海道の名所という名所を走り回り、
複雑なルートでついに稚内に来た。
そしてこの4日間は歩きがメインで、自転車に乗ってる時間はわずかだった。
でも僕にとってはあえて自転車を降りて礼文と利尻を歩いた時間はとても貴重だった。
こんな素晴らしい場所に来て掛け替えのない経験ができたのだから。

Vol.6 SKY-07 Episode 25