Vol.5 TOP-06~Episode 21~

第21話
「雨の日の装備」

8月21日、知床野営場で昨日のお姉さん達と別れた僕はさらに西に向かった。
途中、オシンコシンの滝という変わった名前の滝があったのでそこで少し休憩していた。

右には僕の初めて目にするオホーツク海が広がっていた。

一人のオジサンが僕に話しかけてきた。

「君、これからどこへ行くの?」

「稚内のほうへ行く予定です。」

と答えた僕だがその人はよく見たら吉田拓郎の偽物みたいな顔をしていた。

「え?じゃあまだ北に上がるのだな、頑張って。」と、言うと僕にいくつかのカップラーメンを渡して去っていった。
僕はカップラーメンはかさばるのでちょっと…と思ったが、食料をもらえたことは大変嬉しかった。

と、まあカップラーメンについてはどうでもいいのだが、僕にとってはその人の言った
「じゃあまだ上に北に上がるのだな」の「まだ」という言葉に安心した。

寂しかった昨日のこともあったので「まだまだ旅は続く」
そう思わせてくれたことが嬉しかった。

そして僕は眩しすぎる太陽の下オホーツク海の雄大さを肌で感じながらさらに西へ進んだ。

予定より早く網走に着いたので僕はそこの名所である網走刑務所を見に行くことにした。
しかし、いかに名所とはいえそのあたりのみやげ物やには「網走刑務所」と書かれたキーホルダーまで売るなよ~と思ったが、
そんな僕もちゃっかり「網走刑務所」と書かれたTシャツを買った。(←もっとアホ)


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その後キャンプ場に行き、テントを張った僕だが、驚いたことに僕の隣にテントを張った二人のライダーは奈良出身だった。
しかもそのうちの一人は僕と同じ市内に住んでるとのこと。
僕はその人たちと地元の話で盛り上がった。
そして僕は同じ市内に住むその人が欲しがっていたホクレンの旗の一つをあげた。
そのお礼にと言ってその人は僕に米をくれたが、こんな拾ったような旗でそんなものもらって、いや~かたじけない。(^_^;)

その夜、簡保の宿で入浴だけさせてもらった僕は久々に親に電話をすると僕の親は何日も連絡せずにいたので心配していた様子だったが、
「そんなもん毎日毎日電話なんかできるかいな~」みたいな感じで答えた僕だった。
しかしそのキャンプ場、網走湖の上に光る月も綺麗で眺めも良かったのでいい夜だった。

8月22日、昨日の眺めの良い景色は朝起きると一変して雨の空に変わっていた。
僕はその奈良県在住の人たちに別れを告げるとき、やはりこっちはあんなショボイ旗のお礼と言ってお米をくれたことが悪くて、僕からも何かあげる物はないかと探した。
そこで、僕は思い立った。

「あ、そうだ、エロ本いりません?」

と僕が言うのに対して、同じ市内に住む人の方は

「…え、エロ本…」と言って断ろうとしたが、もう一人のひとが
(下の写真の紫の服の人、一応顔がわからないように小さくしてます。)

「一応…もらっとくよ…。」

と答えたので渡したが、その人はそれを受けとる時に自分の手をズボンで拭いてから受け取っていたのが未だに頭に残っている。

そんな大事にするような物でもないのにな…
と思った。

そして僕は雨の中テントを畳んで出発の準備をした。

それにしてもキャンプ場で雨の日ほどイヤなものはない。
濡れながらテントを畳む空しさ。
また、濡れたテントによりかさ張るし重くなるし臭くなるし、まあ最悪ですわ。

僕らはその後、奈良県在住の人たちと記念撮影してそれぞれに別れた。

Vol.5 TOP-06 Episode 21