Prologue DREAM ~憧れ~3

そんなこんなで高2の夏が終わり、一応進学を考えていた僕は学校の図書室をよく利用するようになった。(形だけですが)
 
そして、僕はそこで一冊の本を見つけた。
それは「サイクル野郎2500キロ」という題の本で、あるチャリダーの北海道のツーリング日記(旅日記)を一冊にまとめたものだった。
 
他のチャリダーが何故わざわざチャリという苦しむだけの手段を用いるのか分からなくなってた僕にとってそれは非常に興味をもった本だった。

僕はその本を読んでいくうちにに次第にその世界に引き込まれていった。

読み終えてその本の巻末にある「図書カード」を見るとそこには誰が借りた形跡もないことに気づいた。
僕は「この本はこんな学校のヤンキーどもに見せるような本ではない。俺が持つほうがこの本にとっても幸せだ!」と勝手に判断し、その本を借りずにそのまま頂くことにした。(ゴメンね、でもきちんと管理もしてないから誰にも気付かれなかった。)そこまでしてでも欲しくなるくらい僕には貴重な本だった。
 
なぜならその本の内容を見て、僕の心が強烈に揺さぶられるものがあったからだ。

その本には次のような描写があった。

~そのとき、もうひとりの自分の声がした。
”オレはどうしてこんなことをしてるのだろう?”
”何でこんな苦しい目にあわなきゃならんのか”
”自分から好きこのんで、わざわざ日本の果てまでつらい思いをしにきたなんて、オレって人間はなんという大バカヤロウだ”~

 
「俺と同じだ・・・。」

読み続けると、その本の主人公はさらに僕と同じように、異性には興味はありつつも特に縁はなくずっと自転車で旅を続けてきた人だということが分かった。
僕はその本の主人公の人とのいくつもの共通点が重なり合って、やがてはその本の中に入り込み、僕自身が北海道にいる気分になった。

「北海道か・・・。」

チャリダーなら一度は憧れる北海道一周旅行。もう自転車はやめようとも思った僕であったが、その本を読み終えた僕には再びチャリダーの魂が燃え上がっていた。
「俺も行きたい」
しかし今度は紀伊半島一周なんかとは訳が違うので「俺にできるだろうか」という迷いはあった。
そんな時、今まで走ってきたところを振り返ってみようと、地図を開いてみた。それは奈良県の白地図で、今まで自転車で走ってきた道を赤でなぞったものだった。
 
それを見ると奈良県ではもう行く所がないほど、その地図が赤くなぞられていることに気付いた。
 
「・・・そうか。俺もこれだけ走ってきたのか・・・」

その地図を見た僕にはもう北海道を諦めるなんてことはできなくなっていた。
 
「行くぞ!!北海道に。」

そしてその「憧れ」は果たされるまで決して消えることなく僕の心を燃やし続けるものとなった。

Vol.0 DREAM
~憧れ~

Vol.0 DREAM-3 Episode 0