第2話 ニセコアンヌプリ-2

長万部に着き、小川のせせらぎが聞こえる位置にテントを張った僕はしばらくくつろいでいた。

日も落ちてランタンに火を灯し、明日の道のりの対策を練ろうと、地図を開いた。
明日は北海道上陸して初めての大きな山越えだ。

今日走った距離とだいたい同じくらいの距離を明日も走るのだが、何しろ今度は山越えだから、そう簡単にはいかない。しかもただの山ではなく、ニセコアンヌプリといって標高1000m以上はあり、例の本「サイクル野郎2500キロ」でも主人公は苦戦していた山だ。
この大荷物で無事に登りきることができるだろうか。
不安はあった。でも、僕にとってこのひとときが一番楽しく感じるのだ。

地図を見ながら明日はどんな道を通ってそこで何をしようかとかを考えるこのひとときが。

テント内でランタンを灯す

それにしてもここ長万部のキャンプ場は設備が整っていて快適だ。
(トイレや炊事場はキレイ、自販機まである)
ただ、こんな自然豊かな所なのに星が一つも見えないのが残念だ。
昨日も夜には雨が降っていた。早く満天の星をこの大地で眺めてみたいものだ。
と思い、僕は眠りについた。 


 次の朝、目覚めて走り出した僕は今までの海沿いの道と別れ、山に入る道へと進んだ。
普通に海沿いの道を走った方が当然早いのだが、僕はここで遠回りになることを承知しながらも山道の方を選んだ。
なぜなら、例の本にも載っていたニセコアンヌプリを自分のチャリで登ってみたかったからだ。
今日は山越えがあるので到着予定時間は予想がつかない。
しかもニセコアンヌプリの山に到達するまでの道のりでちょい苦戦してしまって、今日中にその山の頂上にあるキャンプ場へ行けるか心配になってきた。

そろそろその山が見えてきてもいい頃だ・・と思い、蘭越という町に着いた時、ふと僕の前方に、まるで威圧するかのように三つの巨大な山が並んでいることに気付いた。

「あれがニセコアンヌプリか・・・。俺はあれに登るのだな。」

Vol.1 FIELD-05 Episode 2