Vol.7 LOVE-05~Episode 28~

第28話
「大志を抱け」

9月2日、
今日は北海道に寝泊りできる最後の日。
幸いにも雨は止んでいた。
かといって晴れではなかった。
上空にはたくさんの雲が落ち着かない様子でうろうろしていた。

僕は電話ボックスを探し、もう一度だけ彼女にコールしてみた。

結果は同じ、ファックス音が鳴るだけだった。

「もう会えないのか」

僕は最後の悪あがきを考えた。
住所からして彼女は北海道大学生だと予想される。
北大のポプラ並木あたりを歩いていると偶然ばったりと…
そんな雲をつかむような可能性にかけるか、

この際失礼承知でいきなり家に訪ねるか
いや、それはあまりにも失礼すぎるどころかまさしくストーカーだ。
彼女に恐怖を与えて嫌われてしまうだろう。

しかし、僕は明日の夜にはこの北海道を去らなければならないのだ。
悠長なことも言ってられない。

「この際、家を探してやる。」と、考えた。

そして僕は彼女のマンションらしき建物を発見したが、
直前になってどうしても勇気が出ずとうとう
「いきなり押しかけ作戦」諦めた。

「やっぱりどう考えても失礼だ。」
やはりそんな行動力は僕にはない。

僕は北大をうろついた。
「ここで偶然ばったりなら怪しくない」

だが、その想いも空しく、彼女とは表れなかった。
僕はトボトボ札幌観光を始めることにした。

まずは時計台へ行った。


が、修理工事のため時計台は休館だった。
「はあ?平成10年の9/30まで?あと2年以上もあるやん!長すぎるやろ!」

どうやらツイてないことは続くらしい。そして僕はテレビ塔に上った。
天気はすぐれなかったけど、大通公園を一望できるその景色は見事だった。
テレビ塔でみやげ物を買った。
そこの店員のおばちゃんと少し話しをした。
自転車で北海道を周ってきたこと。
明日、帰ること。
僕はせっかくなのでもっと札幌を観光しようと
「この辺で観光できる場所ってどこですか」と尋ねでみた。

「北大には行ったの?」


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よりによって北大。
僕は「いえ、さっき外側からチラと見ただけで、中には入ってません」
と返すと
「中に入って見て来なよ、クラークさんの銅像もあるし」
と言ってくる。

僕はこれも宿命なのか
「いやもしかしたら、これはあの人と縁を結んでくれる出来事なのかも」

と、勝手な思い込みをして、(単純な)僕は再度北大へ行くことにした。


でも、

あの人の姿はどこにもなかった。

人生そう甘くはない

僕は大通公園でボーっとした。

「ついに会えなかったな…。」

僕の目の前には多くのハトが芝生に座り込んで、とても気持ちよさそうにくつろいでいた。

僕はそれを見ながらしばらくそこでじっとしていた。

「そろそろタイムアップやな。今日泊まるキャンプ場へ急がないと。」

僕は気持ちを切り替えた。
そして札幌の市街地を抜け出した。
今日泊まる予定のキャンプ場は西岡自然の家キャンプ場だ。
たが、そこへ行く前に、羊が丘展望台へ行った。
北大にいたクラークさんはここにもいた。
しかも今度は全身像だ。

いかに気持ちを切り替えたと言っても、札幌であの人と会えなった後悔はある。

「少年よ、失恋が何だ。大志を抱け!」

とクラークさんが語りかけてくるようだった。

「って、やかましいわ!」

僕はなんだかエラそうに指差して僕に説教するクラークさんがムカついた。

牧場にはたくさんのジンギスカンたちがいた。
(↑肉になる前の名前もジンギスカンでいいのかは分からない)

そこでちょっとしたレストランがあったのでおやつ的な食事を済ますと、
僕はキャンプ場を探しに自転車を走らせた。

Vol.7 LOVE-05 Episode 28