港は眩しく輝いていた。
僕は船の方へ向かった。
稚内から礼文島へ行った時に乗ったフェリーとは比べ物にならないほど巨大な船だ。
乗船すると、すぐに甲板へ出て、港の方を見た。
輝く街が僕の目に入った。
船はついに動き出した。
高鳴る鼓動とともに、
ゆっくりと、でも確実に。
街が、大地が、僕の前から遠ざかっていくのが見えた。
眩しい街の光は滴となって、僕の頬を流れた。
涙であふれていた。
寂しいからではなく、
それは多分、母親に甘える子供のように、この大地に僕はそれを感じていた。
「俺はここに来て、少しは変われただろうか。」
小さくなっていく街。
巨大な汽笛の音が海の向こうまで鳴り響いた。
それはまるで旅の終わりを告げるサイレンのように。
「いつか、また来ます。
そのときは今の僕よりも大きくなった姿で。
でも、この大地で見た澄んだ空や、海、緑の大地は
その時まで変わらずにいてくれますか。」
愛したこの地に僕は聞いてみた。
1996年9月3日、約40日に渡る僕の北海道自転車旅行はついに幕を閉じた。
その思い出は消えることなく、僕の胸の中に深く刻まれた。
そして、その後の僕の人生にも大きく影響を与えるほど貴重なものとなった。
あの時の眩しい光景は今でも僕の胸の中で輝き続けている。
NORTH TOURING’96
Vol.7 LOVE
~恋~
完
全走行距離 約3600km