「女の子目当てかよ」
バカ騒ぎを楽しんだ後、僕らは風呂に入って食事を済ませた。
今日は昨日と違って、みんなと打ち解けてるし、踊りも少し覚えたし、早くミーティングの時間になってほしいと思った。
そして、ようやくミーティングの時間になった。
僕らはまるで先輩のように今日また新たに泊まりに来た人達よりも率先するように踊りだした。
そしてここでは踊りだけではなく、さらに歌も歌いまくるユースなので、いろんな歌を歌った。
それらのほとんどが旅をテーマにした歌なので、
それを初めて耳にする僕だったが、なんとなく親しみが湧いた。
スタッフさん達の熱唱する姿を見て
「こんな素直な歌い方もあるのだな」
と思えた。
当時僕は、フォークソングが好きで、それらは社会を批判する曲が多くて、暗いイメージがあったが
今日、このスタッフさん達の姿を見て、僕の考えが大きく変わった。
「この雄大な土地で、その素晴らしさを表現するにはこのスタッフさん達の歌の方がいい」
と思えた。
多くの曲の中には涙を流してしまいそうな曲もあった。
そして、ここでは毎年スタッフさんたちによる桃岩壮オリジナルソングである
「今年の歌」というのが作られていた。
その曲にはまだタイトルがつけられてなかったが、これがまた素直でいい曲で、僕はこの曲が好きになった。
僕には作曲ができなかったが、もし作れるなら僕もこんな曲を作りたいと思った。
(これが後に僕に作曲の力を与えてくれたのだから、この日の出来事は僕の人生をも変えたと言っても過言ではない。)
そして歌が終わり、踊りが終わり、
ミーティングが終わると、みんなで住所交換をした。
僕はその時、さっき歌った「今年の歌」がどうしても欲しくなり、壁に貼ってあった大きな紙に書いてあるその歌詞を、僕は持っていたメモ紙に書き写した。
そして、その曲を作った人の所へ行き、曲のコードを教えてもらった。
するとそこに、今日一緒に歩いたメンバーの一人である、大学4回生で奈良出身の二歳年上のお姉さんが
「あの曲、いい曲やな、私も好き。」
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と、話しかけてきた。
その人は札幌在住だけど同じ奈良県民ということで、親しみを持てた。
それに可愛い人だったので、僕はちょとドキドキした。(しかも彼女は風呂上りやったので妙に色っぽく感じた。)
僕はその調子に乗ってその人に膝カックンのイタズラをした。(これってセクハラ?まあ若かりし頃のすることです。)
彼女は
「もぉ~!」
と言って僕を部屋の外に押し出そうとした。
その勢いで僕は部屋と廊下の段差にバランスを崩しそうになった。
彼女は「落ちろ!」と言ってさらに押してきた。
その後、二人は廊下に出て
「なあ、ジュースおごってよ。」
と言われた。
僕は「こやつ、ねだり方うまいな~」と思ったが、その仕草がかわいかったので、ついついおごってしまった。
そしてその後、まだまだみんなは話で盛り上がっていたが、僕は少し疲れたので2階へ上がった。
2階からさっきのお姉さんが、スタッフさん達と一緒に写真を撮っているのが見えた。
「お~お~、まだやっとるんかい」
と思って彼女がみんなと写真を撮るのを上から見ていた。
するとその時、彼女が
「あれ?ZERO君は?」(下の名前で呼んでくれてた(^_^;))
と、僕を探していた。
2度~3度くらいそうして僕を探してくれていた。
僕はこういう時、いつも忘れられる存在だったので、僕をを思い出してくれた彼女の気持ちがすごく嬉しかった。