Vol.3 TOURIST-04~Episode 11~

 朝目覚めた時Nのテントを見ると、その明るい黄色という色のせいでたくさんのトンボがとまっていた。
それがなにかマヌケに見えた。
でもNが言うにはトンボがとまるのはまだマシな方だとか。なんでも、明るい色だといろんな虫に近寄られるらしい。

人間にはどうかは知らないが、虫にはモテモテのNであった。
 

 


僕らはそのキャンプ場の向かいにあったレストランっぽい店に入り朝食をとることにした。
朝食が済むとNは趣味である写真の撮影に僕はテレビドラマ「北の国から」の撮影現場である富良野観光に出かけた。
ここかなやま湖から20kmほど走ったところに富良野があり、そこからさらに15kmほど山に入った所に麓郷(北の国からの撮影現場)があった。
僕は当時、「北の国から」の内容をほとんど知らなかったのであまり意味はわからなかった。(今ならよく分かるが)


 
 
襟裳岬では森進一の曲「襟裳岬」が延々と流れていたように、この辺りでは、さだまさしの曲「北の国から」が延々と流れていた。
「また、そのままかよ」と、もう少し芸の欲しいと感じる僕であった。

しかし、僕が一番見たかった「五郎の石の家」がその場所になかったことに気付いた。
「おかしいな~Nは確かにあると言ってたのに」と思いながら案内板を見ていた僕はちょうどそこにいた女の人三人組にそれがどこにあるのかを聞いてみた。
するとその場所からさらに自転車で数キロ移動しなければならないとわかった。
少し面倒だったが僕はそこに行くことにした。

五郎の家に着いたがそこの中には入ることはできなかった。
ただ写真だけを撮った僕だがその時ちょうどそこにいたライダーのオネーサンに写真を撮ってくれと頼まれたので五郎の家をバックに彼女の写真を撮った。

その人とはしばらく話をした後、この旅が終わったらお互いの写真を送るということで住所交換をして別れた。

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そして僕は今日もNと同じキャンプ場に泊まる予定なので、その鳥沼キャンプ場を探した。

しかし富良野観光に時間をかけすぎたことで、また夜間走行という時間になってしまっていたのだ。

僕はようやくキャンプ場への看板を見つけ、その看板の指示通りの少し山になった道を走った。
しかし、その道の先にはとてもキャンプ場があるようには見えず、僕は「本当にこの道で合っているのか?」と心配になっていた。
真っ暗で車も通ってこない山道を一人登っていた僕は強風に煽られる木々の音に不気味な気配を感じた。

「なにかいる!?」

と急に恐くなった僕はUターンして逆走をはじめた。
熊でも出てきそうな気配を感じた僕だったが、しかし冷静になって考えてみるとそれはただの風に煽られた木の「カサカサ」という音だった。

僕は恐怖を感じながらも「この先に必ずキャンプ場はある」と信じて今引き返してきた道にもう一度向かっていった。
そしてしばらく走った所でようやく僕はキャンプ場を発見した。

このキャンプ場のどこにNがいるのか分からないが、とりあえずそこにたどり着いたことに安心した。

キャンプ場に入ると4~5人のライダー達が食事をしながら話をしていた。
その人たちは僕に「スイカ余ってるのでいりませんか?」
と聞いてきた。僕はちょうどお腹が空いてたのでそのお言葉に甘えることにした。

僕はその人たちと話をすることでさっき感じた恐怖は徐々に消えていった。

それが終わると僕はNを探した。一緒に食事したライダーの人も僕と一緒にN探してくれてようやくNのテントを見つけた。
Nを見つけた僕はその近くにテントを張って眠りについた。

昨日今日はいろんな人と知り合った。
そして強風の吹くこのキャンプ場ではあったがその夜は天の川も見えるほど綺麗な夜空だった。

 
Vol.3 TOURIST-04 Episode 11