Vol.3 TOURIST-11~Episode 14~

第14話
「集結」

 

次の日、8月12日。目覚めた朝は曇っていた。

今日の目的地は、あの松山千春の出身地、足寄である。
僕はちょうどこの時、ちょっと松山千春のファンだったのでそこに行くのが楽しみだった。
それに今年、‘96年はテレビドラマ、「みにくいアヒルの子」(これ好きやった。)の主題歌に使われていた「君を忘れない」(この歌もまた好き)という歌が大ヒットした後であったこともあり、僕の松山千春に対しての興味は大きかった。

足寄にむけて出発した僕。
昨日も下った白樺峠を今日また下らなければならないことが何か空しく感じた。

昨日の敗北、Hな本自販機の置いてあった鹿追町にいったん出て、国道274号を通り、241号に合流し東へと走った。

地図では平地のように見えたその道も実際走るとじっくりと登り坂になっていた。

風も強く、少し寒いくらいだった。雨の気配も感じたので僕は雨具であるウインドブレーカーを着た。(高性能なウインドブレイカーだから風にも雨にも強いのさ。)

すると、思ったとおり小雨が降りだした。

「嫌な天気やな・・・それにしてもなんて寒さや!」

と思ったその時、僕の後ろから一人のチャリダーが走ってきた。

「こんにちは!」

「ああ、こんにちは」と振り向いた僕だが、その人の姿に驚いた!!
なんと!そのチャリダーはこの雨の中、短パンとTシャツ一枚て走っていたのだ!

それを見ているこっちが寒く感じて僕は思わず「寒くないですか?」と聞いた


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「大丈夫っす!!」と言うチャリダー。そして雨は更に強く降りだした。
それでもまだそのままの姿で僕に同行するチャリダー。

僕は見ていられなくなり、「ホントに寒くないですか?」ともう一度聞いてみた。

「う~ん、ちょっと寒いっす」と答えたチャリダー。そして雨はいよいよ大降りになった。

ついにそのチャリダーもレインコートを着ようと思ったのか、僕と同行するのをやめて低速になった。

「我慢せずにもっと早くそうすればよかったのに・・・。」と思い後ろを振り向いたが、もうその人は完全に見えなくなっていた。

「ちゃんと雨具着てまた走ってくるかな?」と思いながら一人になって走る僕だった。

しばらくしてから再び僕の後ろからさっきのチャリダーの声がした。

「スイマセ~ン!」

僕は「ああ、雨具着て俺に追いついて来たんやな?」と思って振り向いた僕はさらに驚いた!

なんと!そのチャリダーは車から僕に声をかけているではないか!!

「スイマセン!よかったら一緒に乗って行きませんか?」

「!!!!!!!」

はっきり言ってこれには驚いた。
さっきまでチャリに乗ってた人がなんでいきなり車に乗ってるのだ?と、一瞬思ったがその理由は見たらすぐに分かった。

優しいオッチャンがワゴン車を運転していて、この雨に打たれてるチャリダーを可哀相に思い、そのチャリダーと自転車を車に乗せてあげたようだ・・・。

僕は完全自走も考えていたから他人の手を借りるのは少し抵抗があったが、この際お言葉に甘えてその車に乗せてもらうことにした。

まあ、目的地はみんな同じ足寄方面だったし・・・。

そのワゴン車は自転車2台と三人の他人を乗せて足寄まで向かった。

Vol.3 TOURIST-11 Episode 14